その誰かは、そこにあるものが本当(傍点傍点)に(傍点)ある(傍点)ことを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。青(傍点)豆(傍点)、と天吾は思った。しかし声には出さなかった。彼はその手を記憶していた。――青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって……。

 ・ amazon : 1Q84 BOOK 3 (2009) 〈10月‐12月〉後編